2013年4月8日月曜日

いろいろと活用できそうなFacebookアプリ

Copper Mountainというスキーリゾートがある。
ここが面白いFacebookアプリを提供している。

Copper MountainのFacebookページにアクセスして「Cover Photo Generator」へ行くと以下のような画面が現れる。
ここからカバーフォトとして好きな画像を選んで自分のページで使うことができる。ちょっと試してみたのが下のページになる。
当然、御覧のように右下にCopper Mpuntainというクレジットが入っているが、どの画像もあまり目立たないようには工夫されている。

しかし、Facebookユーザが自分のページに使ってくれるCopper Mpuntainクレジット入りの画像が、ユーザの友人へ露出し、その友人が画像を使ってくれれば、そのまた友人へ露出するという話になってくる。

当然、Facebookファンのみならず、Twitterフォロワーに対しても発信して入口を広げている。
スキーリゾートの画像を利用したこのケースではFacebookアプリを介した話だが、別にアプリを開発しなくとも同じようにできないこともない。著作権だとああだこうだと言わない限り、Facebook、Twitter、Flickrなどにアップしている画像を使ってもらえばいいだけのことだ。ただ、使ってもらうためのコツが要りそうだが、それはアイディア次第だろう。

今のところCopper Mountainの二番煎じを始めたリゾートはないそうだが、日本で二番煎じならぬ一番煎じを始めるところがあってほしいと思う。そんなマーケティングを考えるところがあってほしいと思います、本当に。

出典:SlopeFillers

2013年1月24日木曜日

スキーリゾートの共同プロモーション例

ちょっと古い話だが、米ニューヨーク州にある11地区の20のスキーリゾートが1月10日のリフト券を先着1万名に10ドルで販売するという話をNYTが伝えていた。

通常であれば1日84ドルのWhiteface mountain lake placid,47ドルのBelleayre、75ドルのGore Mountainといったところも10ドルで一日リフトを提供するという一大キャンペーンを20のスキーリゾートが共同で行ったわけだ。

もうこのプロモーションは終わったが、下の共同サイトでリゾートごとにリフトチケットの登録をさせていた。当然、氏名やメールアドレスを入力させたので、その後のマーケティングにも使う算段がついていたようだ。


さて、 「私をスキーに連れて行って」という過去の一大社会現象以降、右肩下がりのスキー客数の歯止めがかからない日本で、この種の共同プロモーションといえば、系列やチェーン展開しているスキー場なら聞いたこともあるが、系列をまたいだものはあるのだろうか?

ひとつやふたつが赤字覚悟のキャンペーンを張れば地元メディアのひとつは報道してくれるが、それでは地元スキーヤーやボーダーにしか訴求しない。しかし、州全体で20のリゾートが共同でやるとなると、NYTimes.comといったナショナルメディアが報道してくれる。全米規模での露出が稼げることになる。

この効果を考えて系列をまたいだプロモーションを企画、説得したのは誰なのかを考えると、プロモーション後、リゾートごとのマーケティング施策までを考えに入れれば、きっとどこかのマーケティング会社が骨を折ったはずだ。

年末から年始にかけてスキー場のニュースに接していないことからも、日本にもそんなマーケティング会社がいてほしいなとは、思います。

出典:NYTimes.com In Transit / New York Areas Offer $10 Lift Tickets, for a Day

2012年9月10日月曜日

スキーリゾートの頭のひねり処

先週、「参考:グループ用のシーズンパス」で、参考になりそうなシーズンパスについて書いた。カナダや米国にある特定スキーリゾートにおける4人グループに大幅なディスカウントを適用したシーズンパスの話を紹介した。

なお、複数のスキーリゾートをまたいだシーズンパスもすでに発売されている。これまでに3度ほど紹介したVail ResortのEpicMixだ。これは8つのリゾートで使えるシーズンパスで、個々のリゾートのシーズンパスの約半額だ。

それに加えて今シーズンから「Mountain Collective Pass」が発売されている。これはJackson Hole、Squaw Valley、Alpine Meadows、Ajax、Aspen Highlands、Buttermilk、そしてSnowmassの8か所で使えるシーズンパスだ。8か所のうち4か所で利用でき、2日間だけフリーでリフトが使え、それ以降はリフト券半額、宿泊も25%割引となるパスだ。

ローカルスキーヤー・ボーダーにとって見ると、「Mountain Collective Pass」よりも通常の個別シーズンパスの方が使い勝手がいいので、売上減にはつながらないはずだ。

シーズンパスは基本的に地元、ローカルスキーヤー・ボーダー向けに発売されている。しかし、「Mountain Collective Pass」の例では個々のWebサイトでパスを販売するだけではなく、Liftopiaというチケットポータルと連携し、そのメールDB、ソーシャルリーチ、Webトラフィックを活用してローカル以外のスキーヤー・ボーダーを取り込もうとしている。

目論見通りうまく行くかはこれからだが、日本でも西部のような大手資本や、同じ県内や隣県の複数リゾートがタッグを組んでやることもできる。そんなシーズンパスだ。

米国のNSAA(National Ski Areas Association)の統計をみると、スキー場数も利用者数も減っている。(右縦軸は100万人単位)
5月のブログで以下のように書いた。
この図から推定できるのは、スキー場が減った分、大都市から近いスキー場、交通の便のいいスキー場、スキー以外のアトラクションを備えたスキー場に利用者 が集中している。2011・2012年シーズンはどのスキー場も積雪が少なく利用者が減った。あるいは、交通の便のいい大規模なスキー場が多くの利用者を 集め、便の悪い中小規模のスキー場が利用者減少に苦しんでいる。また、2011・2012年シーズンの利用者減少がスキー場の閉鎖を加速させるかもしれ ず、その結果、大規模スキー場への一極集中化がより進むのではないかということだ。そして、大規模スキー場同士の集客バトルがより激しさを増すだろうということだ。
参考:米国のスキー産業が加速するソーシャルメディア戦略

米国では大規模スキー場同士の集客バトルが激化すると考えたが、共倒れを防ぐ策に出たようだ。独り勝ちはありえず、大手同士の間で共存しなければ共倒れしかねないといった危機感があると見える。

一方、日本では米国よりももっと厳しい状況ではないだろうか。もし、そうだとすると、とに角共倒れを防ぐために頭をひねらなければならない。去年と同じことをやっていては利用客が減少するという危機感を共有しない限り、大手資本傘下のリゾートも危ないかもしれない。

2012年9月7日金曜日

GOプロジェクトローンチ

ブルックリン美術館に関しては、5月と6月に記事を書いた。

参考:ブルックリン美術館のクラウドソーシング(速報)
参考:「Click!」から「GO」へ飛躍したブルックリン美術館の舞台裏

その「GO」プロジェクトの公開日が明日の9月8日と9日の両日ということでいよいよ押し迫ってきた。「GOプロジェクト」そのものは下をご覧いただきたい。

このプロジェクトには約1,800人のアーティストが参加し、3,100人以上のボーター(投票者)が登録している。登録したボーターは、訪れるスタジオを予定表に記入している。2日間で6スタジオを訪問する予定のボーターもいれば、多分無理だろうが下のように102か所を回る予定の兵もいる。
登録しているボーターは3,100人程度だが、友人や家族と連れだって様々なスタジオを訪れるのは間違いない。また、登録せずにスタジオを回る一般の住民、オーディエンス、飛び入り、その日にプロジェクトを知った観光客などはその数倍になるだろう。そして、このGOプロジェクトを蔭から支えるボランティアの存在も無視できない。

少なくとも数万といった数の人々がアーティストのスタジオを訪れ、新しい発見、出会いを心に記すことになる。

美術館という固定施設から足を踏み出し、フィールドでアートと邂逅してもらう体験を提供するGOプロジェクト。そこには物知り顔やしたり顔の鑑賞者はおらず、アーティストと直接会話でき、何気ない質問や会話の中から共感や発見を共有することができる。そしてこの共感や発見はオーディエンスのソーシャルネットワークを経由して計り知れない広がりの中で共有されてゆく。そして、無名に近いアーティストのソーシャルスペース、FacebookやTwitter、Webへオーディエンスを誘い、そこからまた新しいコネクションとエンゲージメント、そしてシェアを生み出すことになる。

出張美術館といった活動もあるが、このGOプロジェクトほど他美術館が今後の参考にするべきプロジェクトは想像できない。これほどのマグニチュードを運営するスタッフィング、リソースを美術館単体で賄うことは不可能だが、友の会やサポーターといった支援組織の全面的なバックアップ、そして、自治体およびIT関連企業の後援、支援さえ取り付けることができれば、日本でも同様プロジェクトをスタートすることは可能だ。是非、来年にでも日本で初めての美術館クラウドソーシングを期待したい。

ところで、GOプロジェクトのWebにはショップもある。そこにはGOプロジェクトのTシャツ、トートーバッグ、スウェット、野球帽がありクレジット購入ができるようになっている。少し時間はかかったけれどちゃんとやるべきことはやっているんです。

2012年9月5日水曜日

参考:グループ用のシーズンパス

先日のSankeiBizに、西武が傘下のスキー場で小学生以下のこどもリフト料金を無料化するという記事があった。

出典:SankeiBiz

例えば、苗場エリアの限定リフト券や苗場ファミリーゾーン専用券の場合、以下のようなリフト券種がある。
小学生以下が無料になったので、夫婦二人で最大8,000円、あるいは7,000円で子供とスキーに出かけられることになる。ホテルやリゾート施設で実施する子供向け企画をテコに家族客を呼び込もうという算段だ。

ただし、交通費、宿泊費、食費、お土産代に加えてのリフト代を考えると、年に2度以上家族連れでスキー場を訪れる客は期待できないということなのか、シーズンパスは販売していないようだ。

しかし、家族連れのしがらみからは無縁であり、スキー・スノーボードに熱中しているターゲット層に対してシーズンパスは有効に機能するはずだ。そういったターゲットは友人、知人達と連れ添ってリゾートに足を運ぶはずなので他の多くのリゾートではシーズンパスを出している。

そのシーズンパスの参考になるケースがある。

カナダのNorquayというスキー場のシーズンパスには、Super Senior(80+)というチケットがあるし、Midweek Indy Pass、Power of 4 passというチケットもある。
Super Senior(80+)は言わずもがなだが、Midweek Indy Passとは月~金曜日の9時から4時まで有効なチケットで、Power of 4 passは何かと言うと、4人グループで一括購入するシーズンパスだ。

そして、米国のChestnut Mountainにも、Fill-A-Quad Season Passesがある。
これも4名の氏名、住所、メール、電話などを登録して一括購入するシーズンパスだ。

Norquayも、Chestnutも、提供している4人グループ向けシーズンパスは、一人でシーズンパスを購入するよりも一人あたりの単価が安くなる。また、4人そろって出かける必要もなさそうなので共同購入クーポンにちょっと似ているチケットだ。

定価の半額近くの特別価格を設定した上で、グルーポンやポンパレに手数料として50%前後をもっていかれる共同購入クーポンよりも、リゾートの負担は少ない。ただし、グルーポンやポンパレといったブランドのネームバリューで集客できない分は、リゾート単独のプロモーションが必要だ。しかし、ソーシャルでつながるターゲットにうまく伝えることさえできれば、シーズンパスを購入するターゲットが1人から、もっと多くのターゲットに増やすことができるかもしれない。

あ、そうそう。上のサンプルは4名固定のシーズンパスになっているけれど、ここはもっと柔軟に導入する必要がある。例えば、「4名以上であれば何人増えても1人当たりのシーズンパスは同額です」といった修正が必要だろう。あるいは自主的なアフィリエート活動を期待して「4名以上集客したリーダーは半額」などだ。

もう9月に入ったわけで、2012・2013年シーズンはすぐ目と鼻の先に顔をのぞかせている。是非、柔軟なシーズンパスを設定し、新しいシーズンを乗り切っていただきたい。

2012年8月30日木曜日

Twitterフォロワー数に一喜一憂しないマーケティング

SlopeFillersのGreg Blanchardが面白い記事を書いていた。

それによると北米のスキーリゾート50か所のTwitterアカウントを調べたところ、Fakeアカウント(SPAMやBOT)が4.8%、Inactiveが23.1%、Goodが72.1%になったそうだ。
出典:Slopefillers

50か所のリゾート合計で706,073人のフォロワーを抱えているうち、Fakeが34,174アカウント、Inactiveが163,244アカウント、Goodが509,079アカウントになっている。

約30%のフォロワーが意味のないアカウントであるとすると、単純にフォロワー数が増えたと喜んでいるわけにはいかない。

そこで、日本のスキーリゾートのTwitterアカウントはどうなっているかということで、彼が使った同じツールを使って調べてみたのが下図だ。(2012年8月29日時点)
最もfake率が高いのは4%でHakuba47、瑞穂ハイランド、 セントレジャー舞子スノーリゾートだ。Inactive率が最も高いのはこれまた瑞穂ハイランド。

最もfake率が低いのは0%でユートピアサイオト、湯沢温泉スキーアルプの里だ。Inactive率が最も低いのは猪苗代スキーミネロエリア。

スキーリゾートで最もgoodが高いのは猪苗代スキーミネロエリアで98%、最も低いのは瑞穂ハイランドで83%となった。

フォロワー数トップ20にランクされるスキーリゾートの合計フォロワー数は42,602人。平均すると10%がfakeやinactiveとなり、それを除いた本当のフォロワーは37,812人となった。


Greg Blanchardが調べた北米リゾートと比較すると日本のスキーリゾートが抱えるfakeやinactiveは今のところ三分の一だ。しかし、フォロワー数が増えてくればこの比率は上がってくるはずだ。なんとかgoodのフォロワーを増やさなければならない。それには価値のあるコンテンツを提供してゆかなければならない。その価値のあるコンテンツを共有してもらうことで露出とネットワークを広げてゆかなければならない。

また、goodのフォロワーを抱えていた所で、スキーリゾート側のツィートがフォロワーに露出していなければ、fakeフォロワーと何ら変わる所もないことになる。そのためには、goodのフォロワーに対してエンゲージメントしてゆかなければならない。スキーリゾート側が発信するだけではなく、goodのフォロワーのツィートをモニタリングしてレスポンス、あるいはアクティブサポート的な対話をしてゆかなければならない。

ツィートしておけばそれでお終いという話にはならないのだが、スキーリゾートの中でそこまでリソースを確保できるところは限られている。マーケティング部門をもっていたり、マーケティング担当者がいるところは希だろう。

となると、関係者やアルバイトを含めた社員全員がなんらかの形で、程度の差こそあれ、発信とモニタリング、レスポンスを行ってゆかなければならない。あるいは、同じ県に所在する複数のスキーリゾートで共同チームを組んだり、所在する県や市町村、観光協会などとウィンターチームを組むことも検討しなければならない。

マーケティングと名のつく施策はリソースがなければ進まない。そして、ソーシャルメディアマーケティングの知見や蓄積、個人ユーザとのネットワークは外注では獲得できないだけに、共同チームやウィンターチームに期待をしたい。

それがなければフォロワー数の増減に一喜一憂するだけに終わってしまう。絵に描いた餅の大きさに目をとられて裏側でカビが広がっていることに気がつかない。

2012年8月8日水曜日

メール・マーケティングも重要

Exact Targetから「The 2012 Channel Preference Survey」が出ている。
消費者に好まれるメッセージ・チャネルを分析し、ランキングしているレポートだ。

それによると消費者が情報受信を許諾した際、最も好んでいるチャネルはemailで77%となっている。これに続くのはDMやSMSなどだが、emailが飛びぬけたメッセージチャネルになっていることが分かる。
そしてチャネルごとの購買経験でもemailで66%がトップとなっている。
出典:ExactTarget

ま、こういったデータを元にメールマーケティングは効果がありますよ、といったお話しだ。

もうひとつデータがある。これはRyan Solutionsが出しているもので、全部で263万人のファンやフォロワーを抱えている北米の18リゾートが行ったFacebookやTwitterにおける50投稿と、emailのCTRを比較したものだ。

それによると、EmailのCTRは2.03%、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアで共有されたCTRは0.29% となっている。ま、サンプル数が極端に少ないので、Emailとソーシャルメディアの効果はCTRでちょうど7倍の開きがあるといったような単純な比較はできないが、注目すべき点であることには変わりがない。
出典:Ryan Solutions

ソーシャルメディアが注目されて毎日のようにメディアで特集され、記事が掲載され、氾濫している。しかし、ソーシャルメディアはマーケティングのひとつのチャネルでしかない。そして、emailもそのチャネルのひとつだ。

ひとつのチャネルにパワーを集中するよりも、複数チャネルを組合せて重層的にコミュニケーションをとっていかなければならないことも事実だ。

その中でもemailマーケティングはコアに据えるべきチャネルだと考えるがいかがだろうか?リスト構築、育成してゆく時間、作業、配信、そして個人情報保護などにコストがかかる点で敬遠されがちがだが、emailはもっと活用されてしかるべきチャネルだ。

2012年8月7日火曜日

2009年時点でマインドセットを転換した米リゾート

2009年11月30日のAd Age Digitalに以下のビデオが上っている。

これは北米で5つのリゾート、20のホテル、6つのゴルフコースなどを運営し、年間10億㌦近くの売上をあげているVail ResortのCEO、Rob Katzがケーブルコミュニケーターフォーラムで講演した時のものだ。

2008年のリーマンショックによる経済の落ち込み、消費の低迷など、劇的に変化した経済状況、それに応じて変化した消費者動向・マインドやメディア状況、ソーシャルメディアの影響力拡大などを背景として、それに呼応するために印刷媒体の広告費を80%削減し、デジタルマーケティングへ転換したこと。広報・広告部門が競合情報などを収集し、ソーシャルメディアなどから毎週発信するメッセージを協議していることなどが語られている。

Vailと言えば2010年9月からEpicMixを使った全く新しいソーシャルメディアマーケティングをやっているリゾートだ。今までのメディア戦略を転換しただけではなく、まったく新しいツールを最初に導入してソーシャルメディアのメリットを最大化する戦略を実行しているリゾートの懐の深さがこのビデオから見えてくるようだ。

参考:EpicMixをご存知ですか?

この底にはマインドセットを転換できたリゾートCEOの頭の柔らかさがある。自身の培ってきたマインドセットがあり、既存の広報・広告部門が抱えているマインドセットがあったはずだ。そして、それらを転換するには当然、様々な軋轢があったはずだ。それらを乗り越えてデジタル化へ切り替えさせたトップの判断の正しさと素早さは、別にリゾートだけではなく、あらゆる種類の集客施設、そして一般事業会社も見習うべき点は多い。

2012年7月19日木曜日

来シーズンの目玉は?

梅雨が明けたと思ったら、Whistler Blackcombから2012/2013年シーズン幕開けを告げるプロモーションemailが届いた。
8月31日までに予約すれば、7泊のリフト&宿泊パックで40%割引の86㌦という安値をアナウンスしている。そして3泊以上すれば12歳以下の子供は宿泊はタダ、大人1人につき子供1人のリフト券もタダだ。

この最安値パックは12月21日までのもので、22日以降に4パターンがある。中でもクリスマスと新年を挟むクライマックスパターンは最高値になっている。しかし、4パターンともに3泊以上すれば12歳以下の子供は宿泊はタダ、大人1人につき子供1人のリフト券もタダだ。
8月31日にまでに予約し、「3泊以上すれば12歳以下の子供は宿泊はタダ、大人1人につき子供1人のリフト券もタダ」が来シーズンのキャッチ、目玉のようだ。

北米のスキーリゾートの中でいの一番にemailを送ってきてくれたのだが、Whistler Blackcombは最後のひと押しを欠いている。上のパッケージ・ページ(出典)にFacebookへのリンクはあるのだが、Twitterへのリンクがない。

出典:Whistler Blackcomb Early Booking Deals

他のページには必ず、Vimeo、RSS、Facebook、Twitter、Flickr、YouTube、Tripadvisorへのリンクがあるのだが、この早期割引ページにはそれがない。特にTwitterへのリンクがないのが痛い。残念。

さて、日本のスキーリゾートも来シーズンに向けて各種企画を練っている時期だと思うが、email、プラグイン、ソーシャルメディアを統合したWebサイトにあわせて、「目玉」が肝心だ。

来シーズンの目玉に何をお考えですか?
  1. EpicMixですか?
  2. モバイルアプリですか?
  3. ウィンター・サマーシーズンパスですか?
  4. TripAdvisorですか?
  5. Twitter・Facebookプロモーションですか?
  6. 年間・シーズンパスポートのギフト化ですか?
  7. 参加型クラウド・プロモーションですか?
  8. FourSquare、Pinterestですか?
最大40%割引を打ち出したWhistler Blackcombの目玉を上回るような企画を期待しています。

2012年7月11日水曜日

メトロポリタン美術館からの勧誘メール

メトロポリタン美術館から勧誘(html)メールが届いた。(クリックでWebへ)
メンバーになれば、7月24日から8月5日までの朝8:30から1時間、エルザ・スキャパレッリとプラダを取上げた「Schiaparelli and Prada: Impossible Conversations」を鑑賞できますよという勧誘だ。

「Join Today」をクリックすると、メール登録をしているユーザ向けの「Met Net」なら年間70㌦で何度でも行くことができるメンバーシップを申し込むことができる。
欧米のニュースリリースに登録していると、やってくるのはすべてhtmlメールなので、画像やクリックボタンがうまく配置されている。それが分かっているだけに開封率やCTRも高いだろうと思う。そしてLPも分かりやすく、サイト側の意図したフローをたどっていくことができる。

また、メトロポリタン美術館の場合、NYから半径200マイル以遠のユーザには、「National & International Membership」があり、結構なディスカウントが提供されているので、遠方のユーザもメンバーになりやすい。

欧米では、Webサイトにアクセスするユーザを待っているだけや、テキストベースのメルマガを送っている時代ではなくなっている。そのため各美術・博物館は、様々なアプローチをとっている。ソーシャルメディアスペースに参加してコミュニケーションを多様化したり、htmlメールを登録ユーザに送って勧誘している。Wikiを公開してWebおよびニューメディア戦略プロセスに対する貢献を募っていたりする。

ソーシャルメディアスペースに参加して情報を発信・露出することも重要だが、個別ユーザのメールボックスにメールを届けることも合わせて行っている所が大半だ。TwitterやFacebookから情報発信しておけばいいと考えるような所は少ない。

特に140文字のテキストに、キャッチコピー、タグライン、画像、クリックボタンをつけられるわけもない。高速で走る車窓を飛び去ってゆく140文字からコンテキストを読み取り、リンクをクリックできるわけもない。

だから多層化されたコミュニケーションのコアツールとしてメールは活用されている。そして、上図にあるようにメールの右肩には、Twitter、Facebookへのリンクも備えてタッチポイントをマルチチャネル化している。

勧誘メールひとつからも多くのことが学べる。

2012年7月5日木曜日

ミュージアムとモバイルサービス

世界24カ国、615人のミュージアム関係者やモバイルベンダー、リサーチャーから回答を受けた3回目の調査、「Museum & Mobile 2012」というレポートが公開されている。
残念ながら日本から調査に参加しているミュージアムはなさそうだ。

さて、回答の78%(480件)は米国、英国とカナダがそれぞれ5%(33件)を占めている。ミュージアム関係者からの回答は554件あり、そのうち現在モバイルサービスを提供しているのは177件、165件は今後12ヶ月間にモバイルサービスの開始を予定しており、212件はモバイルサービス提供の予定はないそうだ。
現在、モバイルサービスを提供している、あるいはこれから予定しているミュージアムの内訳を見ると、美術館・ギャラリーがトップに来ている。続いて歴史博物館がくるが、その後はずっと離されている状況だ。当然だろうが、科学・技術館は回答者数が少ないながら比率的には美術館・ギャラリーを上回るモバイル対応をしているように見える。
次にミュージアムの年間入場者数規模ごとのモバイル対応がある。年間25万以上の入場者を抱えているミュージアムは50%以上、100万人以上の入場者を抱えているミュージアムは60%以上がモバイル対応している。5万~25万人規模のミュージアムでも40%を越えている。また、これから予定している所を加えると5万人以上の入場者を抱えている所の70%は対応することになる。
これら以外にも、モバイル対応の中身、館内外でのモバイル対応、モバイルサービスの無・有料、利用するハードウェア、ターゲットオーディエンス、モバイルサービスの目的、モバイルサービスを提供しない理由、モバイルサービスを提供するための障害・チャレンジ、これから2年後におけるミュージアムとモバイルの将来に関する回答結果が示され、そして、最後に過去12カ月間で体験したモバイルサービスが挙げられている。

出典:Museum & Mobile in 2012 Survey Result

ミュージアムに来場するオーディエンス、利用者へのサービスには、様々なものがある。その中のひとつのサービスとしてモバイルを全世界のミュージアムが注目している。

別な見方をすると、現在、様々な企業がモバイルで多様なサービスを提供している現状を背景として、その利用者・ユーザは、一般事業会社と同列にミュージアムを見る。同じようなサービスをミュージアムにも期待する。また、ミュージアムの関係者自体がそれらサービスを享受しているため、便利だからとか、入場者にモバイルサービスを提供することでミュージアムの価値やコンテンツ共有を高められると理解している。そのため、世界のミュージアムがこぞってモバイル化を進めている。

全人口を上回る台数の携帯・スマホが普及し、様々なモバイルサービスが行われている日本でも当然、注目されるべきものだ。しかし、この調査に参加した日本のミュージアムはない。コンタクトはあったはずだが、それに回答したミュージアムはいなかったということだろう。

2年後の将来を考えた時、回答には
  • Webサイトのモバイル最適化
  • モバイル戦略構築
  • モバイルコンテンツのインハウス制作
  • スマホアプリ開発
  • ロケーションサービス
  • 館内WiFiネットワーク構築
  • AR(拡張現実)活用
といった項目が挙げられている。

世界のミュージアム全体の29%がすでにモバイルサービスを提供し、27%が提供を予定している。一方、国内ではどれくらいになるのだろうか?乱暴にひと桁少ないとすればそれぞれ3%程度しか、現状を見ていない、見えていないといったところだろうか?

調査に参加した各国のミュージアムと日本のミュージアムで直面する現実、将来は違うと考える方はいないはずだが...。

以前、「日本の美術・博物館の50%は新しいことに挑戦していない?」で、
ガラケーと同様にガラミュー(ガラパゴス・ミュージアム)という言葉が独り立ちし、独り歩きをしないように期待したい。  
と書いたけれど、やはり、今、モバイル対応をしなければ、日本のミュージアムはガラパゴス化してしまいそうな気になってしまう。2年後になったとしても、今、現状を把握していないミュージアムに変化が訪れると期待はできない気がする。

参考:日本の美術・博物館の50%は新しいことに挑戦していない?

2012年6月18日月曜日

金沢21世紀美術館の不思議

公的助成が削減され、「冬の時代」を迎えている美術館が多い中、金沢21世紀美術館といえば、2004年10月のオープン初日に12,200人が入り、247日目に100万人、開館1年目には157万人が入り、2011年8月には入館者が1,000万人を突破したというとんでもないところだ。

当初、初年度30~40万人を目標にして行われた様々な施策、プレイベント、街頭キャンペーン、市内の小中学生4万人の無料招待、子ども券、旅行代理店や地元商店との連携、無料ゾーンと有料ゾーン、アートアベニュー等などは、当時の美術館長、蓑豊氏が詳しく書いている。

出典:超・美術館革命 蓑豊

外に積極的に出て、各方面のステークホルダーと連携して、大きなムーブメントを起こすという蓑氏が行ってきた各取り組みを見るにつけ、「なぜ、金沢21世紀美術館はTwitterをやっていないのか?」という疑問が湧いてくる。

以下は、「集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1」からミュージアム部分だけを抽出したものだ。
参考:集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1

金沢21世紀美術館だけではなく、国立博物館、国立科学館、九州国立博物館もTwitterはやっていない。国立新美術館はTwitterをやっているとはいっても、フォロー、リプライ、リツィートはしていないし、お気に入りやリストは使っていない。

しかし、独立行政法人国立美術館に属する各館はともかく、いままでやっていなかったことや新しいことをいち早く取り入れるといった気質を前面に押し出していたはずの金沢21世紀美術館がTwitterをやっていない。Facebookもやっていない。それらしいFacebookページはあるのだが公式かどうかは分からない。ご存知の方はご教授ください。ここが不思議だ。

金沢21世紀美術館には、広報室があり、広報ボランティア制度もある。各種割引を受けられたり、年に何度も入館できる友の会制度もある。他の美術館に比べれば非常に充実した利用者サービスを提供している。そして、そのネットワークを駆使、活用したコミュニケーションやマーケティングのツールとしてTwitterやFacebookは使えるはずだがやっていない。

超・美術館革命によれば、「初年度の入場者数157万人のうち、40%が金沢市民で、 60%が県外や外国から来た客だった」とある。だからWebサイトは英語でも表示される。英米だけではなく英語くらいわかる諸外国のオーディエンスに対しても美術館を開いている。

この「英米だけではなく英語くらいわかる諸外国のオーディエンス」のオンラインの活動スペースはどこにあるかというとソーシャルメディアだ。コミュニケーションチャネルとしてのTwitterやFacebookだということは多くのメディアが取上げ、指摘している。だから欧米の美術館はこぞってソーシャルメディア対応を進めている。日本でも同様な傾向が見られるからこそ、国立新美術館だけではなく多くの施設が対応を進めている。

それにも関らず、金沢21世紀美術館はTwitterも、Facebookもやっていない。

どうしてなんだろうと頭を抱えてしまう。

下図は、The Art Newspaperが出している2011年の世界の美術館入場者数ランキングだ。○はTwitterやFacebookに対応しており、×は対応していない。

入場者数トップ30を見ると17位以下の美術館で対応が進んでいないことも事実だ。16位までの先頭集団があり、対応の遅れている色付き第二グループをゴッフォやスコットランド、シカゴといった第三グループが追い上げているようにも見える。
推測だが、多分入場者数が150万人前後の金沢21世紀美術館はこの第二グループに入っているということなのかもしれない。

さて、株式会社インプレスR&Dは、「インターネット白書2012」(監修:財団法人インターネット協会)を出している。それによるとソーシャルメディア人口は5月時点で5,060万人。その65%に当たる3,290万人が投稿や書込みなどなんらかの情報発信を行っているそうだ。
出典:InternetWatch

これだけの人数が活動しているスペースに参加しないのはもったいない。Twitterで毎日、数十、数百のツィートが飛び交っているこの日常をほっておくのはもったいない。ロイヤルファンがそれこそつながろうと差し伸べている手をシカトするのももったいない。

もったいないと思っているのは金沢21世紀美術館も同じだろう。「金沢21世紀美術館の不思議」とは書いたが、多分、内部で色々と策を練り、運用開始の直前まで行っているとは思うので、あっと驚くようなことが近々あるのかもしれない。きっと、ブルックリン美術館にも負けない、「新・超・ソーシャルメディア美術館革命」をやってくれると期待したい。

参考:ブルックリン美術館のクラウドソーシング(速報)
参考:「Click !」から「GO」へ飛躍したブルックリン美術館の舞台裏

2012年6月15日金曜日

「Click !」から「GO」へ飛躍したブルックリン美術館の舞台裏

2008年6月27日~8月10日までブルックリン美術館では、「Click !」という企画展が開催されていた。

これは3段階のプロセスで行われた「Changing Faces of Brooklyn」という展覧会で、まず、アーティストに展覧会テーマに沿った写真を撮って応募してもらう。その後、応募作品すべてをオンラインのオープンフォーラムで審査する。審査結果のランクに応じて展覧会に出品されるというものだ。

この展覧会の元ネタというかアイディアは、2004年に出版された「The Wisdom of Crowds」だったそうだ。(この邦題は「みんなの意見は案外正しい」というちょっと変なタイトルになっているので、今なら集団知とか、集合知とした方がぴったりくる)

「Click !」は、「The Wisdom of Crowds」が言うように、「経験を積んだ専門家と同様に、クラウドがアートを審査することができるのか?」を検証するために企画・開催されたようだ。今までとは違うプロセスで新しいスペースを提供された多くのアーティストやローカルの人々が挙って参加したであろうことは想像に難くない。

2008年にブルックリン美術館はそんなプロジェクトをやっていた。もう、もろ手を挙げて降参するしかない。

ところでこの展覧会を企画・運営したのは、キュレーター・学芸員ではなく、情報システム部長のShelley Bernsteinさんだ。ここでも降参の白旗を上げざるを得ない。

この2008年の「Click !」以降、彼女には沢山の人から、次の「Click !」はいつやるのかという質問が絶えなかったらしい。しかし、同じことの繰り返しではなく、「Click !」から学んだことをベースに違った、まったく新しいこととして、2009年にCurrier Museum of Artから移ってきたキュレーター部長のSharon Matt AtkinsさんとShelleyがブレストを繰り返して、練りに練った企画が「GO」だ。
 この「GO」プロジェクトはすでに5月から始まっている。「GO」に関しては参考を参照してもらいたい。

出典:ブルックリン美術館 2008年展覧会「Click !」
出典:ブルックリン美術館 コミュニティ:Bloggers@brooklynmuseum
参考:ブルックリン美術館のクラウドソーシング(速報)

というわけで2008年の「Click !」から2012年の「GO」へと飛躍したわけだ。

この2つのプロジェクトの要、肝は情シス部長のShelleyだ。彼女は、モバイルアクセス、Webベースのコメントブック、収蔵品のデジタル・オンライン化といった美術館と地域コミュニティを結びつけるミッションを担当し、 上記2つのプロジェクトの企画、立ち上げ、運営などに関っている。

彼女が一体どんな人かというと、2007年4月4日からFacebookを始めている。2009年1月からTwitterを開始、いままでに2,674回ツィート、1,163人をフォローし、2,528人のフォロワーを抱えている。リプライも50%を越えていて多くのユーザと会話、コミュニケーションを行っている。ソーシャルメディアやオープンコミュニケーションの申し子のような人だ。彼女自身が美術館がこれからのコアターゲットだと考えるオーディエンスそのものだ。そして、彼女はアーリーアダプターとして館員に大きな影響を与え、最新情報・知識を共有し、美術館オーディエンスとの新しいコミュニケーションとエンゲージメントの可能性を熱く語っていたはずだ(と思う)。

この彼女がいなければ、そもそも2008年に「Click !」を立ち上げることなどできなかったろうし、そしてその拡張・拡大版である「GO」も陽の目を見なかったことは間違いない。

なぜなら2009年にキュレーター部長になったSharonは、Twitterアカウントは持っているがツィートは一度もしていない。Facebookページも友達以外には公開していない。LinkedInでもそうだ。言い方は悪いが、一般的で保守的なレイトマジョリティの代表のような人だ。ソーシャルメディアの知見が浅い、少ないSharon一人では「Click !」から飛躍することも、新しく大きな広がりを持つ「GO」も進まなかったはずだ。

そして、Shelleyの知見を活かす体制、仕組みが作れ、プロジェクトが遂行できたのは、ブルックリン美術館の上層部が危機感を持ち、オーディエンスに対する新しいアプローチ、オーディエンスのスペースにいかに美術館を参加させるかに心を砕いていたからだろう。旧態依然のロジックやプロセス、自身を含めた既存担当から局面打開策は出てこないという危機感が根底にあるはずだ。

いや、キュレーター、館長、情シス、広報、Web担当など多様な部門、部署の担当者が同じ理解を共有していたからこその話かもしれない。

「ブルックリン美術館の舞台裏」は、危機意識、必要な知見の理解、その共有、トップのイニシャティブ、そしてローカルのアーティストや人々とのオン・オフのコミュニケーションから成り立っている。そのどれが欠けても「Click !」も「GO」も走らず、空中分解していたのが関の山だったろうと自信を持って言える。

あなたのミュージアムには同じような舞台裏が御有りですか?
これからのコア・オーディエンス像をお持ちですか?
アーリーアダプターやレイトマジョリティをご存知ですか?
展覧会企画に学芸員以外の職員が参加できますか?
上記と同様の危機感をお持ちで共有されていますか?

2012年6月14日木曜日

入場者数世界トップ5美術館のTwitter対応

日本の美術・博物館の入場者数トップ5と、世界のそれをTwitterにおける対応で比較してみようとしたが、日本は国立新美術館しかTwitterをやっていないというお寒い現状があるので、比較と言うよりは欧米の現状を見てみた。

The Art Newspaperによるとルーブル、メトロポリタン、大英、ナショナルギャラリー、テートが2011年に世界トップ5の入場者数を誇る美術館だ。 同年、東京国立博物館が163万人で22位、国立新美術館が68万人で80位となっている。
本格的に開始したのが2011年6月のルーブルが少ないのは当然だが、それ以外の世界のトップ5はよくツィートしている。2009年のはじめから開始したメトロポリタン、大英博物館、テート、2010年5月からのナショナルギャラリーにしても数千回レベルだ。

メトロポリタンは5.3回ツィート@日でトップ、テートは4.5回、ナショナルギャラリーが4.3回、大英博物館が3.2回、ルーブルは2.3回だ。メトロが今後も他館をツィート回数で引き離してゆくのは間違いない。(このツィート回数には、リプライ、リツィートも含まれる)

また、各館ともに千人、数百人規模でフォローし、フォロワーはテートが65万人、メトロが46万人。この2館が頭二つ以上抜けている。この2館は「お気に入り」も多く、テートはちゃんと「リスト」も使っている。

テート美術館は「ソーシャルメディアコミュニケーション戦略」を公表し、「文化面での世界最先端のソーシャルメディアプラットフォームになる」というゴールを設定しているだけに、当然も当然だろう。

参考:テート美術館のソーシャルメディアコミュニケーション戦略

その点、メトロポリタン美術館はどうかというと2011年12月ごろ、オンラインコミュニティマネージャを募集していた。何をやるかというと
  • Facebook、Twitter、Flickr、FourSquare、Tumblr、その他のソーシャルメディア・コミュニティを管理、プロジェクト企画・運営・報告
  • ファン、トラフィック、エンゲージメント増加策企画・実行
  • Blogコメント管理・対応
  • SEO対応コンテンツ制作、トラッキング、モニター、対応
  • ユーザフィードバック入手・対応、オーディエンス・レベニュー増加策企画
  • 統計分析
  • コミュニティを管理し、その声となり、ユーザと美術館ステークホルダーの仲介をする
などだ。 そして、求められる経験は、
  • ソーシャルメディア、SNS、ニューメディアトレンドの理解
  • プロジェクトマネージメント経験、Web制作、HTMLおよびPhotoShop操作
  • emailおよびチャネルマネージメント実績
  • 4年以上のオンラインマーケティングあるいはオンラインジャーナル発行経験
となっていて、B.A.と美術界での経験も必須となっている。

まるでIT企業のソーシャルメディアマネージャの募集のようだ。ここまで詳細に業務や経験を並べている求人も少ないのではないだろうか。そんな求人を美術館であるメトロポリタンがしていた。

出典:M&T Online Community Manager - Metropolitan Museum of Art

2011年10月には、10年ぶりにWebサイトをリニューアルしているし、MyMetというサービスもやっている。積極的にソーシャルに出張ってエンゲージメントを拡張しようとしているからこれも当然か。

参考:メトロポリタン美術館のソーシャルメディア対応

さて、フォローやフォロワー数よりも重要なリプライとリツィート率・数を見ると、さすがのテートが合計で45%以上、大英博物館が39%、メトロポリタンが38%、ナショナルギャラリーが33%。まだ1年目のルーブルでも約15%だ。
言いっ放しのメガフォンマーケティング手段としてTwitterを使っているところはなさそうだ。

質問や意見に対応し、会話に参加し、価値のあるツィートを自分のフォロワーに共有することをどこもやっている。 言いっ放しにせず、コミュニティを育成し、美術館へのロイヤルティ向上を目指すには、コミュニティメンバーの声を聞き、意見・苦情に対応しなければならない、ということを理解している。

言いっ放しでもネームバリューだけで相当数のフォロワーがつきそうなテートやメトロポリタンでさえ、地道にエンゲージメントを行っている。だからこそ65万とか46万人といった数を積み上げることができたのだろう。

自分や郷土に関するツィートをボットに拾わせて、自動的にリツィートさせているどこかの国のどこかの美術館とは大きな違いだ。

参考:あまり推奨しないTwitterマーケティング施策

そして、アウトリーチのプロ、エンゲージメントのキュレーター、ソーシャルメディアPRのプロを募集している美術館や水族館を見ると、メトロポリタンだけではなく世界のトップ5は当然、すでにずっと前から手を打っているんだろうなと思わされてしまう。
出典:NowHiringToday

このまま現状維持を続けていてはエンパワーされたオーディエンスに取り残されるという危機感があるからこそ、入場者数世界トップ5の美術館はもちろんのこと、その他の美術館、水族館もオーディエンスにキャッチアップするためにオンラインコミュニケーション、そしてエンゲージメントを進めている。ミュージアムは生き残るためにエンゲージメントから信頼を獲得しようとしている。

そのために、コミュニケーションスキルを持った人材を集め、あるいは内部で教育し、コミュニケーションの大前提である相互信頼を世界のトップ5が獲得しようとしている、というのがTwitterを含めたソーシャルメディアサービス・ツールの現状だろう。

同じ危機感がありますか?
言いっ放しのメガフォンマーケティングでフォロワー数やファン数を増やすことが目的ですか?
リプライやリツィートから相互信頼を獲得することを考えたことがありますか?

2012年6月11日月曜日

集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1

ちょっと古くはなるが、2009年度のレジャー・集客施設の入場者数ランキングが綜合ユニコム株式会社から出ている。各カテゴリごとに入場者数トップ5までの施設を出している。

そこで、そのランキングを元にしてTwitterに関する数字をまとめたのが下図になる。
出典:総合ユニコム株式会社 ニュースリリース (pdf)

どのレジャー・集客施設も、基本的にイベントやアトラクション、最新ビデオや画像の告知・案内、ブログ更新を中心としたツィートを行っている。

7つのカテゴリの中で最もTwitter対応が進んでいるがファームパークでトップ5中の4施設が対応済みだ。その次はテーマパークが3施設、遊園地や水族館が2施設、 フラワーパークとミュージアムが1施設で、まったく対応していないカテゴリが動物園となっている。

さて、35施設中、Twitter運用を行っている所は13施設に限られている。その13施設中で9施設しか他のTwitterユーザをフォローしていない。お気に入り機能を使っている所は2施設、リストを使っている所は4施設だ。どの施設もツィート以外はあまり活用していないようだ。

ノート:
  • お気に入り
    他ユーザのツィートをメモ的、備忘録的にチェックしておくことができる。お気に入りに入れたツィートをしたユーザにはメールが送信されるので、誰が自分のどんなツィートをお気に入りにしたのかが分かる。ただし、Twitterは毎回メールを送ってくるわけではないようだ。
    さて、お気に入りを使っていないということは、1)使い方を知らない、2)他ユーザのツィートを見ていない、3)その他の理由が考えられる。
    お気に入りを使っていない施設は、多分、1)と2)が大半だろう。
  • リスト
    10人程度のユーザをフォローし、全部合わせて1日に100件程度のツィートだとすると、毎日チェックすることもできる。しかし、100人、1000人をフォローしている場合、そんなことは無理だ。そこで、カテゴリ分けをして毎日チェックすべきユーザや、特定のテーマごとにユーザをグループ分けして特定グループ(リスト)のユーザのツィートを見ると効率よく、見逃すことなくチェックすることができる。
    さて、リストを使っていないということは、1)使い方を知らない、2)他ユーザのツィートを見ていない、3)その他の理由が考えられる。
    リストを使っていない施設は、多分、1)と2が大半だろう。
  • お気に入りやリストを使っていない施設
    は、大半が使い方を知らないのだろうが、ユーザの声を聞いてない、聞いていたとしても対応しないというケースもあるだろう。
    それは、Twitterからの広報告知が目的で、ユーザ・利用者の声を吸い上げる、あるいは、アクティブサポートを行う体制ではないからだ。

    さて、一方通行のコミュニケーションチャネルとして、昔ながらのニュースリリースや告知・案内を流しているだけで、顧客・利用者・ユーザとの会話を目的としたものではないことがTwitterユーザに分かる日はすぐ来ると思う。

さて、次に、施設別に見ると、東京ディズニーランド・シーがダントツで28万人以上のフォロワーを抱えている。 ただし、USJはこのランキングに入っているレジャー・集客施設中、最も多い3,800回以上もツィートしているし、2万人以上もフォローしており、2指標でトップということになる。

いや、東京ディズニーランド・シーのTwitterがダントツの影響力を持っていると思われる向きもあるだろうが、上で説明したようにフォローしているユーザ数が多い場合、タイムラインをツィートが流れてゆき、個々のツィートを確認することなど不可能に近い。facenaviによると、日本人ユーザの平均フォロー数は325人だ。このフォローしているユーザの中から特別なアカウントをリストに登録して、それを見ているユーザはどれくらいいるのだろう。東京ディズニーランド・シーをフォローしている28万人のうち、何%がツィートを見ているのだろう?

出典:facenavi Twitter日本人ユーザー・データ調査

そこで、TweetStats.comを使って、各アカウントがどのようなツィートを行っているかをもう少し詳しく見たのが下図になる。(リプライには、アカウント名を先頭につけたツィートと、アカウント名が文中にくるツィートも含まれる)
リプライもリツィートもしていないのは、東京ディズニーランド・シー、海遊館、マザー牧場、国立新美術館、そして、リツィートはしているがリプライしていないのがナガシマリゾートということになる。(ナガシマリゾートは施設の情報更新を行うボットだと明記しているので、リプライはせず、マニュアルで2回リツィートしたようだ)

その中で1人のユーザもフォローしていないのが、東京ディズニーランド・シー、海遊館、国立新美術館だ。

フォローされたからフォロー返しするといった単純な構図もあるが、価値のあるニュース・情報・コンテンツを提供してくれるアカウントをフォローする場合、先方がこちらをフォロー返ししなくても別に気にはならない。だから、1人もフォローしていないアカウントも成立する。

しかし、リプライやリツィートはちょっと違う。

レジャー・集客施設のほうで「リプライ」はしませんと明記している所以外、リプライは個別ユーザのツィートに対して返信したり、なんらかの発信内容に個別ユーザのアカウント名を入れたツィートを発信することになるので個別ユーザ対応をしてくれることになる。リツィートは自分のフォロワーに対して個別ユーザのツィートを共有することになるので、その価値を認めたことになる。いずれも顧客・利用者・ユーザの個別対応や彼らのツィートをチェックしていなければできない作業だ。

自分のツィートに対してちゃんとリプライしてくれるのは当然うれしい。そして、「なんらかの発信内容に自分のアカウント名を入れたツィートを発信」された側からすると、ちゃんと自分のことを覚えてくれていることが分かり、これもまたうれしい。

リツィートされたユーザ側から見ると、レジャー・集客施設が抱えている何万人、何10万人というフォロワーに自分のツィートが共有されたことになる。もう、天にも昇る気持ちになる。自分のフォロワーも少しは増えるかと期待するし、リツィートしてくれたレジャー・集客施設に感謝の気持ちが一杯になる。今まで以上のロイヤルユーザになってゆく。

そしてリプライやリツィートされた側は、それを引用したり、リツィートすることで自分のフォロワーに施設との会話を共有してくれる。自分だけではなく、レジャー・集客施設も含めて。

こういったこと、個別ユーザ対応やロイヤルユーザの育成、そしてレジャー・集客施設の露出拡散を排除しているのが、リプライもリツィートもしていないレジャー・集客施設ということになる。


先ほどツィートおよびフォロー数でトップだったUSJだが、リプライが44%、リツィートが14%、3,823回のツィート中58%が他ユーザへのレスポンスとなっていて、USJが各種プロモーションやアトラクション案内をイニシエートしたのは42%(1,609回)となる。リプライ率、リツィート率ともに2位だ。

以下のようにリプライあり、リツィートあり、楽しい会話が成立しているのが見て取れる。
もうひとつ、富士急ハイランドもリプライが46%、リツィートが28%、1,505回のツィート中74%が他ユーザへのレスポンスとなっていて、各種プロモーションやアトラクション案内を行ったのは26%(379回)となる。富士急ハイランドはリプライ率、リツィート率ともに1位だ。

こちらはフォローしたユーザへのフォロー返しを伝えたり、体験を送ってくれた利用者に本当に楽しげに返信している。
リプライやリツィートの面で考えると、USJや富士急ハイランドのTwitterアカウントのほうが、顧客・利用者・ユーザの体験価値を認め、自身のフォロワーに共有している。個別ユーザ対応を行い、ロイヤルユーザ育成を着実に行っていると見える。

レジャー・集客施設のツィートを見てくれているかよく分からないフォロワーを沢山抱えているよりは、個別ユーザ対応や、ロイヤルユーザ育成を行っている方が、コミュニケーションとして成立していると思える。

また、コミュニケーションが成立しているとすると、レジャー・集客施設の露出拡散という面からこの2施設は、フォロワー数だけで判断できない効果を上げているはずだ。

よく、「フォロワー数が1,000を超えました。ありがとうございます」といったツィートを見かけるが、本当に評価、モニターすべき指標は、リプライやリツィート率・数、そして個別ユーザの引用・リツィート数だということになる。(ただし、これを計測するのは難しい)


最後に、集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1としてまとめると、
  1. レジャー・集客施設のTwitter対応はまだこれから
  2. 既存のレガシーコミュニケーションの手法をそのまま応用したTwitter活用が目立つ
  3. ソーシャルメディアというオープン、双方向、対等なコミュニケーションチャネルとしてTwitterを活用するという理解ができているのはごくごく少数派
  4. 個別ユーザ対応、ロイヤルユーザ育成を実行できているのはごくごく少数派
  5. 効果指標として、フォロワー数ではなく、リプライ・リツィート率・数を見ている所はいない(かもしれない)
  6. 発信するニュース・情報・コンテンツのキュレーションができていない
ということになる。

6に関しては今回書いていないが、これが本当に肝になる所なので、別途書くことにします。

さて、集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その2(Facebook)に関しては次回(書くかも...)

2012年6月5日火曜日

あまり推奨しないTwitterマーケティング施策

ある美術館のTwitterアカウントがある。今年の2月からTwitter運用を開始し、これまでに数千回以上ツィートしている非常に積極的な所だ。

そこでTweetStats.comで詳しく見てみた。開始早々の2月と3月は月間1000回以上ツィートしていたが、さすがに4月以降ちょっと息切れしてきたようだ。それでも500回以上のツィートを行っている。
曜日ごとのツィート数を見ても、土日は開館しているとしても、多分休館日であろう月曜日もツィートしている。
そして、時間ごとのツィートを見ると、5時台を除くすべての時間帯でツィートを行ってる。
もう、超人的としか言いようのないほど、積極的にやっているので、フォロー、フォロワー数も2,000、1000台を越えており、相応の効果が出ているようだ。

と、考えるのはまだ早い。

なぜなら、Twitterの発信内容がちょっとおかしいのでは...と、考え込んでしまうほどなのだ。それは、リツィートが全体の90.42%にもおよんでいるからだ。
アカウント名は加工したが、最もリツィートした回数の多いアカウントは124回、次は84回、3番目も74回リツィートしている。

Twitterアカウントを使って自分の美術館の展覧会案内をするのはごく自然だし、自分や美術館、町、郷土、その他に関連する他ユーザのツィートをリツィートすることはある。違った見方や評価を知ってもらうためにも他ユーザのツィートをリツィートすることは意味のあることだ。

しかし、リツィートがつぶやきの9割を越えているのは異常としか言いようがない。

リツィートしたアカウントの上位にくるのは、どうやら美術館アカウントと関連のあるアカウントのようだから、上で説明したようにリツィートする理由にはなる。しかし、上位を合計しても700弱なので、それ以外のアカウントのツィートを丹念に調査して、上位10アカウントの数倍以上のリツィートを行っていることになる。

そんなことが可能だろうか?担当者がおらず、猫の手も借りたいほどの現場で、いちいち自分の施設に関連するツィートをチェックし、発信することができるのだろうか?それも1年365日、1日24時間連続で...?


その疑問は、リツィートされたつぶやきをよく見ることで解決した。どうやら「キーワード検索」を行った上で、それをリツィートしているらしい。他ユーザのツィートをボットに検索させ、それをリツィートさせているらしい。

それだから土日、月~金曜日の区別なく、一日中24時間に近く、絶え間なくツィートすることができるわけだ。ボットだからこそ、休みなくせっせと設定されたキーワードにマッチしたツィートを拾い集め、発信することができる。

もうこれは、Twitterを使った広報でも、マーケティングでも、プロモーションでもない。コミュニケーションチャネルに流すコンテンツの収集を自動化しただけで、オリジナルコンテンツの企画、取材、制作、編集も考えておらず、フォローしてくれたユーザに対して何も考えていない自殺行為に近いと思う。


一般のユーザからすると、自分のツィートを拾ってリツィートしてくれるというありがたい存在なので、そのお返しとして美術館アカウントをフォローする。だから、美術館のTwitterフォロワーを増やすためには効果が出ているはずだ。

しかし、Twitterアカウントを運用する目的は何もフォロワー数を増やすことではない。少ないフォロワーであろうと、身の濃い会話、コミュニケーションを紡ぐこと、その会話のファン・参加者を増やすことのはずだ。そこから美術館へ足を運ぶ人々を長い時間をかけて増やしてゆこうとするのが最終的な目的地、ターゲットのはずだ。

一方、Twitterアカウントを開設しても、外に発信するコンテンツがないため、開店休業に至っているアカウントがそこかしこに存在する。あるいは開設直後から、これでもかとXX案内、YY案内、ZZ案内を連呼しているアカウントもある。アカウントプロファイルに「フォローも、リプライもしません」と明記してコミュニケーションを拒絶しているアカウントもある。

そんなアカウントよりはまだましで、リツィートという手法で自分の美術館、町、郷土などに関連するツィートを連ね、ソフトに美術館の露出、認知、想起を狙っていると見られなくもない。しかし、リツィートが9割以上にもおよんでいるのは本末転倒だと思う。

こんなTwitterマーケティング施策はあまりやってほしくない。

なお、嬉しいことにこの美術館アカウントは、ボットによるリツィート以外のツィートが増えてきているようなので、今後に期待したい。

2012年5月31日木曜日

彼我の差はかくも広く、深く、そして遠い

昨日、一昨日と2日にわたって、AAM(米美術館協会)と、そこが設立したCFM(Center for the Future of Museums)の取り組みなどを紹介し、統計データやマーケティング、将来予想と現状把握、モニタリング活動の必要性について書いてきた。

さて、CFMには、Research Roundupというセクションがあり、その最新のものとして昨年11月7日にアップされた資料がある。
Tools for the future
The Near future
Social Trends, etc.
Other Articles, essays and recent items of interest
Refresh and reflect
といった区分けがあり、Tools for the futureには5項目、7つの資料がピックアップされている。

その中から、「10 Internet Technologies Educators Should Be Informed About」を取上げてみる。これは、EmergingEdTechをやっているK. Walshが2011年9月に公開した資料だ。
  1. ビデオ&ポッドキャスティング
  2. デジタルプレゼンテーションツール
  3. コラボ&ブレストツール
  4. ブログ&ブロギング
  5. ソーシャルネットワーキングツール
  6. レクチャーキャプチャー
  7. 学生レスポンスシステム&投票・調査ツール
  8. 教育ゲーミング
  9. オープン教育リソース
  10. iPad&タブレットデバイス
タイトルの通り、「教育関係者が知っておくべき10のインターネットテクノロジー」だが、こういったソーシャルトレンド、予想、社会における博物館の役割に関係するような参考資料を適宜アップデートしている。

それだけではなく、博物館に関連した情報を収集するため、未来予測に関連したり、カルチャー観光に関するブログをリストアップしたり、ソーシャルメディアトレンドや果てはロボットに関するブログまでリストアップしている。

また、下のようにGuide to Scanning for Changeというスライドも提供している。
この至れり尽くせりといった情報提供があり、各個別博物館の取り組み、トライ&エラーを見聞きして、あるいは内部資料としてのケーススタディなどがあって初めて、2034年に存在できる博物館に成り得るということかもしれない。

彼我の差は、現状認識と、調査・情報収集を元にした未来予測の力に他ならない。

そして今、MoMAのTwitterフォロワーが100万人を越えている時、
日本の美術・博物館で最大のフォロワーを抱えている森美術館が26,000人台なのを知り、
著名美術館のいくつもが、Twitterアカウントを運用していなかったり、アカウントはオープンしているがタダの1回もツィートしていないのを見ると、ここにある差はかくも広く、深く、そして遠いと感じる。

2012年5月30日水曜日

35年後の博物館と社会:トレンドと考えられる将来

「Museum & Society 2034: Trends and Potential Futures」というレポートが、AAM(米美術館協会)が設立したCFM(Center for the Future of Museums)によって公開されている。
出典:CFM Museums and Sociey 2034: Trends and Potential Futures

これは、2009年から35年後の2034年に美術・博物館や社会そのもの、それを取り巻く環境がどうなっているかという予想を行ったレポートだ。

巻頭に、「予想を立てるというゴールは将来を予言することではなく、今、意味のあるアクションを取るために知っておくべきことを明確にすることだ」という未来予測学者、Paul Saffoの言葉を引いている。

内容は、アメリカ国内の人口に占める人種分布変化・高齢化、就労人口の男女比率変化、エネルギー価格変動、不況、貧富格差、コミュニケーション手段の継続的な革新、コンテンツのデジタル化、コンテンツ流通のデジタル化が、社会や美術・博物館に対してどんな意味を持つのか、どういう影響を与えるのかをまとめている。

そして、2012年版のトレンドウォッチも上がっている。
出典:CFM  TrendsWatch 2012: Museums and the Pulse of the Future

そこで取上げられているトピックは何かと言うと、「クラウドソーシング」「モバイル」「AR(拡張現実)」などだったりする。

先週、「ブルックリン美術館のクラウドソーシング(速報)」を取上げたばかりだが、3月か4月にリリースされたばかりの2012年版トレンドウォッチの先を行っているような美術館もいるのが現状だ。

参考:ブルックリン美術館のクラウドソーシング(速報)

そうした現状を踏まえると、レポートの表紙の中にある大きなビルのうち、どれかはアメリカの美術・博物館のはずだと思えてくる。もし、それが35年後であったとしても。

同じような表紙の中に日本の美術・博物館もいてほしいのだが、そのためには将来の予想と現在を取り巻く環境を把握し、動向をモニターしていなければならない。

と、考えるとどこかが音頭を取ってやってほしい。

それは全国美術館会議だと思う。


-この項明日に続く

2012年5月29日火曜日

全国美術館会議に必要な委員会、研究部会は?

全国美術館会議という団体がある、全国364館(国立8館、公立228館、私立128館)、そして賛助会員が31社加盟している。そこには7つの研究部会、保存研究、教育普及研究、情報・資料研究、小規模館研究、ホームページ部会、機関紙部会、美術館運営制度研究部会がある。

5月28日には徳島の大塚国際美術館で第61回全国美術館会議総会が開催されていた。
3年ごとに文科省の社会教育調査があり、そこで9分類の博物館数や入館者数統計があるので必要がないと言えば必要がないが、この種、団体があると一般的に各種統計、調査などのデータを提供していることが多いので、独自のもう少し詳しい調査データがあればと期待していたが、そういったものはなかった。

もうひとつ、期待していたのは、研究部会に「マーケティング」的な活動をしているものがあればということだったが、これも見あたらなかった。(見落としていた場合、ご教授ください)

同様な団体は、世界的にはICOM(International Council of Museums)があり、米国にはAAM(American Association of Museums)がある。そのAAMにはMBO(Museum Benchmarking Online)というデータがあって、
  • 売上、コスト
  • 人員(雇用、ボランティア、人件費)
  • 入館者数、入館料
  • 教育
  • 寄付
  • 運営コスト
などが入手できるようになっている。

また、AAMでは5月31日には「リサーチ&マーケティング」、6月5日には「ミュージアム・ビジネス・プランニング」が予定されている。

「リサーチ&マーケティング」
AAMのPR&マーケティング専門家ネットワーク委員会とニューヨーク植物園がコラボして、
  • マーケットリサーチが、如何にして将来のミュージアム来館者を理解する切り口となるか、また彼らがミュージアム体験から何を求めるのか
  • 電話、オンライン調査、そしてソーシャルメディアツールを使ってオーディエンスの視点を活用するトレンドのアップデート
  •  政府やその他ソースから資金を獲得するためにどのように経済的影響の調査を活用するか
    「マーケティングゴールにマッチする調査手法の調整」
    「文化観光と文化オーディエンスの理解」
に関するセミナーを開催する予定だ。

「ミュージアム・ビジネス・プランニング」
NY美術館協会、AAMなどがコラボして、「非営利組織としての価値および優先事項を保持しながら、ミュージアムは一般事業会社のように運営するようプレッシャーを受けていると感じることが増えている。一般事業会社のベストプラクティスをミュージアム運営に組み込むことに意味があるが、困難をともなうチャレンジとなる。このWebinarでは、ビジネス・プランニングに必要となるプロセスを検証する」として、
  • 施設能力・リソースをベースとしたプランニングからのシフトに必要となるものは
  • 施設の基本的ビジネスモデルをどのように明確化し、分析するには
  • 「カスタマー」「投資家」と「ビジター」「ドナー」の差異
  • ビジネスプランを構築するために知るべき情報およびデータとは
  • 誰が参加し、何に対して責任を持つのか
  • 利益あるいは損失を越える成功をどのように計測するか
といったことを、ライブWebinarで配信する予定だ。

AAMにどのような委員会、研究部会的なものがあるかはよく分からないが、統計データがあり、リサーチ&マーケティング関連のセミナー、Webinarも開催している。

自施設だけでは何をやるにしても判断材料がない。どのようにやるべきかといった知見の蓄積もない。そこに、他施設のデータを集めたベンチマーク統計があって初めて比較・対照することができる。そして、そこを踏み台にして、現状を如何に打破するか、拡張・拡大するかといった考え方、手法、事例を学ぶこともできるサービス、資料があって初めて最終ゴールに近づくことができる。

そんなデータ、資料をAAMは提供している。

それにしても、ライブWebinarとは...。米国内ではもう一般的なセミナー形態になっているが、それを美術館団体でも提供する時代になっている。国内ではPDFファイルのダウンロード提供もままならない所がいくつもあるというのに。

さて、AAMが提供するコンテンツを見れば見るほど、全国美術館会議にも統計データ、マーケティングに関する委員会、研究部会が必要だと思いますが、いかがでしょうか?

-この項、明日に続く

2012年5月28日月曜日

スキー場はユーザレビューをリンクするべきですよ!

先週、「米国のスキー産業が加速するソーシャルメディア戦略」で紹介したWhistler BlackcombのWebサイト末尾左には、各種ソーシャルメディアスペースへのリンクがある。

参考:米国のスキー産業が加速するソーシャルメディア戦略

その中の右端にある、フクロウのようなロゴが、トリップアドバイザーだ。
世界最大の旅行情報(クチコミ・レビュー)サイトであるトリップアドバイザーへのリンクをなぜ、Whistler BlackcombのWebから貼っているのだろうという疑問が湧く。

リンクをクリックすると以下のページへ飛ぶ。

カナダ、Whistler地方のクチコミ情報2位にWhistler Blackcombが来ており、382件のレビューが上っている。

「なんだ2位なのか」という方もおられるだろうが、1位は「PEAK 2 PEAK」というゴンドラに関するレビューで、それは2008年にWhistler Blackcombが建設したものだ。ということで、1位、2位はWhistler Blackcombに関するもので、8位と9位もWhistler Blackcombだ。

施設側がいくらしゃかり気になって、「うちのスキー場はいいですよ」 と声を枯らしても、ひとつ、ふたつネガティブなレビューがあればユーザの「行く気持ち」はそこで断たれかねない。しかし、ひとつ、ふたつ、あるいはそれ以上、ポジティブなレビューがあれば、ユーザの「行く気持ち」に拍車がかかること請け合いだ。

それもトリップアドバイザーがやっているようにFacebookで友人関係にあるユーザのレビューが出てくれば、「もう即、予約」という話になってくる。

日本でも同じだ。日本版サイトで「日本のスキー場」を検索すると、ページトップ右上に「トリップアドバイザーはFacebookを活用して、パーソナライズされた内容を提供します」とある。


18件のスキー場レビューが上っている(ただし、検索結果は各ユーザごとのアクセス・検索履歴によって変動する)。

例えばトップに挙げられている「山形蔵王温泉スキー場」は32件のレビューがあり、「とても良い」が19件、「良い」が11件だ。雪質が良い、秋には紅葉がきれい、日本有数のビッグゲレンデ、樹氷のメッカ山形蔵王といったレビューが並んでいる。そして、各レビュアーに対して、何人もの人々が「役に立った」と評価しているし、それぞれのレビューに対して個別に「役に立った」と評価している。

こういったレビューとユーザ評価を「トリップアドバイザー」を利用するユーザだけに独占させておく手はない。本当にもったいない。だからこそ、Whistler BlackcombはWebページのトップからリンクを張っているわけだ。

Whistler Blackcombのように年間200万人以上のスキー客を世界中から集め、2億㌦以上の売上を上げる世界的なトップリゾートであっても、こういったユーザレビューサイトの力を借りている。いや、借りなければユーザの信頼を獲得できないことを理解していると言った方が正しい。

ユーザの情報・コンテンツ制作力、発信力、共有力が、マスメディアを支配するような一般事業会社のそれを上回っている現在、どんなに支配的な集客施設であったとしても、独自のプロモーションやマーケティングで目標を達成することなどできない。それを理解しさえすれば、ユーザの力を借りる、ユーザと対等な立場からのコミュニケーションをオープンに行いさえすれば、目標に近づくことができる。ユーザの信頼を勝ち得ることができる。

「いや、うちのWebでもちゃんとユーザのレビューを掲載している」という施設もある。しかし、施設が管理・コントロールしているスペース内のレビューを信頼するユーザより、第3者スペースでのレビューを信頼するユーザの方が多い。そして、第3者スペースでは、自分のクチコミを自由に書き込むことができるが、施設Webスペースでそんなことができるだろうか。ネガティブなレビューを書き込むことができるだろうか。

どこのスキー場やリゾートのWebサイトへアクセスしても同じようなコンテンツが並んでいる。どこにするか決める決定的なポイントを見つけるのは難しい。候補に挙がっているスキー場、リゾートを利用したことのある知人・友人がいれば別だが、目的地を選択する際、利用者のクチコミをまずチェックするようになるのにそんなに時間はかからない。

そして、そういったクチコミは施設の公式Webサイトとは関係のない、レビューサイトや、Facebook、Twitter、ブログなどを経由して広まっている。ということを理解すれば、Webサイトだけでの情報提供や集客は難しく、ソーシャルメディア対応が必要だなとなる。その結果が、Whistler BlackcombがWebページのトップからリンクを張っている理由だ。

トリップアドバイザーの日本人ユーザ数はまだ数百万人程度(2009年9月で200万人近く)だが、この数百万人程度がソーシャルメディアを経由して数千万人に影響を及ぼすことを考えると、「ユーザレビュー」サイトとのリンクは必ず必要なものだ。

出典:InternetWatch TripAdvisorのCEOに聞く