2012年6月5日火曜日

あまり推奨しないTwitterマーケティング施策

ある美術館のTwitterアカウントがある。今年の2月からTwitter運用を開始し、これまでに数千回以上ツィートしている非常に積極的な所だ。

そこでTweetStats.comで詳しく見てみた。開始早々の2月と3月は月間1000回以上ツィートしていたが、さすがに4月以降ちょっと息切れしてきたようだ。それでも500回以上のツィートを行っている。
曜日ごとのツィート数を見ても、土日は開館しているとしても、多分休館日であろう月曜日もツィートしている。
そして、時間ごとのツィートを見ると、5時台を除くすべての時間帯でツィートを行ってる。
もう、超人的としか言いようのないほど、積極的にやっているので、フォロー、フォロワー数も2,000、1000台を越えており、相応の効果が出ているようだ。

と、考えるのはまだ早い。

なぜなら、Twitterの発信内容がちょっとおかしいのでは...と、考え込んでしまうほどなのだ。それは、リツィートが全体の90.42%にもおよんでいるからだ。
アカウント名は加工したが、最もリツィートした回数の多いアカウントは124回、次は84回、3番目も74回リツィートしている。

Twitterアカウントを使って自分の美術館の展覧会案内をするのはごく自然だし、自分や美術館、町、郷土、その他に関連する他ユーザのツィートをリツィートすることはある。違った見方や評価を知ってもらうためにも他ユーザのツィートをリツィートすることは意味のあることだ。

しかし、リツィートがつぶやきの9割を越えているのは異常としか言いようがない。

リツィートしたアカウントの上位にくるのは、どうやら美術館アカウントと関連のあるアカウントのようだから、上で説明したようにリツィートする理由にはなる。しかし、上位を合計しても700弱なので、それ以外のアカウントのツィートを丹念に調査して、上位10アカウントの数倍以上のリツィートを行っていることになる。

そんなことが可能だろうか?担当者がおらず、猫の手も借りたいほどの現場で、いちいち自分の施設に関連するツィートをチェックし、発信することができるのだろうか?それも1年365日、1日24時間連続で...?


その疑問は、リツィートされたつぶやきをよく見ることで解決した。どうやら「キーワード検索」を行った上で、それをリツィートしているらしい。他ユーザのツィートをボットに検索させ、それをリツィートさせているらしい。

それだから土日、月~金曜日の区別なく、一日中24時間に近く、絶え間なくツィートすることができるわけだ。ボットだからこそ、休みなくせっせと設定されたキーワードにマッチしたツィートを拾い集め、発信することができる。

もうこれは、Twitterを使った広報でも、マーケティングでも、プロモーションでもない。コミュニケーションチャネルに流すコンテンツの収集を自動化しただけで、オリジナルコンテンツの企画、取材、制作、編集も考えておらず、フォローしてくれたユーザに対して何も考えていない自殺行為に近いと思う。


一般のユーザからすると、自分のツィートを拾ってリツィートしてくれるというありがたい存在なので、そのお返しとして美術館アカウントをフォローする。だから、美術館のTwitterフォロワーを増やすためには効果が出ているはずだ。

しかし、Twitterアカウントを運用する目的は何もフォロワー数を増やすことではない。少ないフォロワーであろうと、身の濃い会話、コミュニケーションを紡ぐこと、その会話のファン・参加者を増やすことのはずだ。そこから美術館へ足を運ぶ人々を長い時間をかけて増やしてゆこうとするのが最終的な目的地、ターゲットのはずだ。

一方、Twitterアカウントを開設しても、外に発信するコンテンツがないため、開店休業に至っているアカウントがそこかしこに存在する。あるいは開設直後から、これでもかとXX案内、YY案内、ZZ案内を連呼しているアカウントもある。アカウントプロファイルに「フォローも、リプライもしません」と明記してコミュニケーションを拒絶しているアカウントもある。

そんなアカウントよりはまだましで、リツィートという手法で自分の美術館、町、郷土などに関連するツィートを連ね、ソフトに美術館の露出、認知、想起を狙っていると見られなくもない。しかし、リツィートが9割以上にもおよんでいるのは本末転倒だと思う。

こんなTwitterマーケティング施策はあまりやってほしくない。

なお、嬉しいことにこの美術館アカウントは、ボットによるリツィート以外のツィートが増えてきているようなので、今後に期待したい。

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