2012年6月18日月曜日

金沢21世紀美術館の不思議

公的助成が削減され、「冬の時代」を迎えている美術館が多い中、金沢21世紀美術館といえば、2004年10月のオープン初日に12,200人が入り、247日目に100万人、開館1年目には157万人が入り、2011年8月には入館者が1,000万人を突破したというとんでもないところだ。

当初、初年度30~40万人を目標にして行われた様々な施策、プレイベント、街頭キャンペーン、市内の小中学生4万人の無料招待、子ども券、旅行代理店や地元商店との連携、無料ゾーンと有料ゾーン、アートアベニュー等などは、当時の美術館長、蓑豊氏が詳しく書いている。

出典:超・美術館革命 蓑豊

外に積極的に出て、各方面のステークホルダーと連携して、大きなムーブメントを起こすという蓑氏が行ってきた各取り組みを見るにつけ、「なぜ、金沢21世紀美術館はTwitterをやっていないのか?」という疑問が湧いてくる。

以下は、「集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1」からミュージアム部分だけを抽出したものだ。
参考:集客施設上位のソーシャルメディア対応の現状:その1

金沢21世紀美術館だけではなく、国立博物館、国立科学館、九州国立博物館もTwitterはやっていない。国立新美術館はTwitterをやっているとはいっても、フォロー、リプライ、リツィートはしていないし、お気に入りやリストは使っていない。

しかし、独立行政法人国立美術館に属する各館はともかく、いままでやっていなかったことや新しいことをいち早く取り入れるといった気質を前面に押し出していたはずの金沢21世紀美術館がTwitterをやっていない。Facebookもやっていない。それらしいFacebookページはあるのだが公式かどうかは分からない。ご存知の方はご教授ください。ここが不思議だ。

金沢21世紀美術館には、広報室があり、広報ボランティア制度もある。各種割引を受けられたり、年に何度も入館できる友の会制度もある。他の美術館に比べれば非常に充実した利用者サービスを提供している。そして、そのネットワークを駆使、活用したコミュニケーションやマーケティングのツールとしてTwitterやFacebookは使えるはずだがやっていない。

超・美術館革命によれば、「初年度の入場者数157万人のうち、40%が金沢市民で、 60%が県外や外国から来た客だった」とある。だからWebサイトは英語でも表示される。英米だけではなく英語くらいわかる諸外国のオーディエンスに対しても美術館を開いている。

この「英米だけではなく英語くらいわかる諸外国のオーディエンス」のオンラインの活動スペースはどこにあるかというとソーシャルメディアだ。コミュニケーションチャネルとしてのTwitterやFacebookだということは多くのメディアが取上げ、指摘している。だから欧米の美術館はこぞってソーシャルメディア対応を進めている。日本でも同様な傾向が見られるからこそ、国立新美術館だけではなく多くの施設が対応を進めている。

それにも関らず、金沢21世紀美術館はTwitterも、Facebookもやっていない。

どうしてなんだろうと頭を抱えてしまう。

下図は、The Art Newspaperが出している2011年の世界の美術館入場者数ランキングだ。○はTwitterやFacebookに対応しており、×は対応していない。

入場者数トップ30を見ると17位以下の美術館で対応が進んでいないことも事実だ。16位までの先頭集団があり、対応の遅れている色付き第二グループをゴッフォやスコットランド、シカゴといった第三グループが追い上げているようにも見える。
推測だが、多分入場者数が150万人前後の金沢21世紀美術館はこの第二グループに入っているということなのかもしれない。

さて、株式会社インプレスR&Dは、「インターネット白書2012」(監修:財団法人インターネット協会)を出している。それによるとソーシャルメディア人口は5月時点で5,060万人。その65%に当たる3,290万人が投稿や書込みなどなんらかの情報発信を行っているそうだ。
出典:InternetWatch

これだけの人数が活動しているスペースに参加しないのはもったいない。Twitterで毎日、数十、数百のツィートが飛び交っているこの日常をほっておくのはもったいない。ロイヤルファンがそれこそつながろうと差し伸べている手をシカトするのももったいない。

もったいないと思っているのは金沢21世紀美術館も同じだろう。「金沢21世紀美術館の不思議」とは書いたが、多分、内部で色々と策を練り、運用開始の直前まで行っているとは思うので、あっと驚くようなことが近々あるのかもしれない。きっと、ブルックリン美術館にも負けない、「新・超・ソーシャルメディア美術館革命」をやってくれると期待したい。

参考:ブルックリン美術館のクラウドソーシング(速報)
参考:「Click !」から「GO」へ飛躍したブルックリン美術館の舞台裏

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